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問題解決、「活用」の起爆剤に 空き家所有者情報の開示 仕組みづくりに着手 国交省中心に検討

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 空き家の流通を促進させるため、その所有者情報を宅地建物取引業者などの民間事業者に開示する仕組みが検討されている。急増する空き家が社会問題化している一方、リノベーションやインターネットを使ったマッチングが普及したことで、流通事例も増えてきた。しかし、そもそも〝空き家の持ち主は誰か〟という基本情報が分からなければ流通の俎上に乗せることができない。核心部分の対策は、空き家問題解決の突破口となるか。

「売りたかった」 手こまねく所有者

 埼玉県南西部に位置する入間郡毛呂山町。東武鉄道越生線武州長瀬駅の周辺では、碁盤の目状の道沿いに、20坪前後と狭めの住宅地が並ぶ。「以前から空き家が増えている」と話すのは、地元の不動産会社・丸善住宅販売の遠藤潤代表だ。

 同社では買い取りを含め、空き家の売買に積極的に携わっている。多くが狭小住宅であることから、まず空き家の隣家に購入を打診し自宅の敷地を広くする提案を行う。空き家の状態がよければ、そのまま生かして売りに出す。

 取り組む上でのネックは「持ち主の特定が難しい」(遠藤社長)ことだ。購入希望があっても、目当ての空き家の所有者が分からなければ先に進めない。ただ、潜在的には「空き家を何とかしたい」という所有者が多いはずだと遠藤社長は指摘する。

 「別件でたまたま来店した人に、『7年前に相続してから空き家になっている。売りたかったが、踏ん切りがつかなかった』と相談されたりする。手をこまねいている持ち主は多い。個人情報だから、自治体から持ち主を教えてもらうことはできない。しかしフロントラインにいるのは我々だ。(所有者の情報を)教えてほしい」(同代表)

「活用可能」は約48万戸

 空き家の総数は全国で約820万戸に上る。このうち賃貸や売却などの予定がないものは約320万戸で、これらが持ち家ストックに占める割合は年々拡大。国交省は「除却」または「活用」を促進し、これらの空き家に対処していく考えだ。後者については耐震性や腐朽・破損の程度、立地条件といった観点から、活用可能なものが約48万戸あると推計している。 

 活用できるのであれば、空き家も立派な不動産。そしてその流通は宅建業者の領域だ。ところが冒頭のように、「空き家が誰の持ち物か分からない」という現実が立ちはだかる。

相続手続きされず 登記簿と実態のズレ

 所有者を知りたいときは、登記情報から割り出す方法が一般的だ。手数料を支払い、法務局から登記事項証明書の交付を受ける。有料の登記情報提供サービスを利用すれば、インターネット上でも取得可能だ。しかし、相続登記がなされず亡くなっている人の名前が記載されたままだったり、住所変更の手続きをしていなかったりして、〝本当の所有者〟が誰なのか結局分からないケースが少なくない。ほかに住民票や戸籍の写しを取得する方法もあるが、本人や行政機関、一定範囲の親族などを除くと、弁護士、司法書士、土地家屋調査士といった法令で定められた士業しか交付請求することはできない。

「所有者にどうアクセス」 国交大臣に要望

 住宅政策に精通する鶴保庸介参議院議員は、「不動産ポータルサイトの普及もあり、リフォームするなど『見せ方』や『売り方』を工夫すれば空き家にニーズがあることが分かってきた。昔と違って、一般消費者の間で中古住宅に対する理解が深まってきていることも下地にある」と話す。

 こうした需要を一般化させるためにも、入り口をふさぐ〝所有者不明問題〟をまず直視する必要がある。鶴保議員は3月の参議院予算委員会基本的質疑で、石井啓一国土交通大臣に対して「所有者不明の空き家にどうやってアクセスしていくのか。ぜひ、そこのところは考えていただきたい」と訴えた。

 国交省は既に、具体的な施策の検討に入っている。現時点で有力なのは、固定資産税情報における所有者情報を、宅建業者などの民間事業者や団体などに開示する方策だ。

開示は所有者の同意必要

 固定資産税情報の取り扱いに当たっては、地方税法に基づき地方公共団体の税務部局が守秘義務を負う。その特例が、昨年5月に全面施行された空家等対策の推進に関する特別措置法(空き家特措法)に位置づけられた。空き家の所有者を把握する目的で、固定資産税情報を税務部局と住宅局などの空き家部局が共有できるという内容だ。

 これはあくまで自治体内での内部利用を認めた規定であり、固定資産税情報を外部に出すことはできない。総務省によると、一度内部利用された固定資産税情報は税情報でなくなるが、今度は空き家部局の職員に守秘義務を課す地方公務員法と、個人情報保護法によって守られることになるという。

 〝二重のガード〟を突破し、所有者情報を民間と共有するにはどうすればいいか。答えは「所有者本人の同意を得ることで、情報が秘密でなくなればいい」(総務省)。これについて国交省は「(施策の)検討の余地がある」とみる。例えば個々の所有者に当たるのではない方法など、スムーズに同意を取得するためのルールづくりに向けて、議論を進めている。 

開示対象、費用負担の所在 制度設計はこれから

 制度の詳細は今後詰められる。宅建業者は一候補ではあるものの、開示対象として決まったわけではない。また同意を得る際は、自治体が所有者に連絡を取る手間とコストが掛かる。それを誰が負担するのか、という点も検討が必要だ。

 更に、ベースの議論がなされる可能性もある。空き家特措法は、特定空家への措置が含まれるなど「危険な空き家への対策」という側面が強い。空き家の活用促進に特化した今回のルールづくりとは、やや趣旨が異なる。そのため「法改正も考えられる」(国交省)という。

     ◇

 仮に宅建業者が開示対象になれば、不動産の専門家の立場から空き家活用に貢献でき、業務領域の広がりも期待できる。当事者意識をもって議論の行方を見守りつつ、賛否を含めて声を上げてほしい。(鹿島香子)

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