不動産テックEXPO

都心5区・賃貸オフィス 低迷続く市場、ピークアウト見えず IT、2次空室が左右

この記事を読むのに必要な時間:約4分

都心5区・オフィス市況、直近1年の推移(※三鬼商事の発表資料より作成。平均空室率は現空床と退去前の募集床で算出) 5区の平均空室率。平均空室率は上がり続けており、港区の上昇幅が最も大きい(※三鬼商事の発表資料より作成。平均空室率は現空床と退去前の募集床で算出)
 東京都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷)の賃貸オフィス市況の悪化が続いている。空室率の上昇、賃料の低下という傾向が1年以上続いており、需要の低迷が色濃く反映されている。20年度は新型コロナウイルス感染拡大を背景に5区いずれも空室率は上昇したが、前半は渋谷区が最も高く、後半に入って港区が最も高いという状況が現れた。そこにはオフィスの解約、床面積の縮小を行う企業がベンチャー・中小企業から大企業に広がっていることの現れと言える。業種の面も交えつつ、都心5区の市況感を考察したい。(古賀和之)

 市況の悪化は調査の対象・切り口が異なっていても同じ基調を示す。6月11日に公表された三幸エステートの調査結果では、5月・大規模ビル(1フロア面積200坪以上の賃貸オフィスビル)の空室率は10カ月連続で上昇し、前月比0.31ポイント増の2.88%。また、空室率の先行指標となる潜在空室率(現空床に加え、テナント退去前の募集床も対象)は16カ月連続で上昇し、同0.12ポイント増の7.13%を計上した。

 6月10日に公表された三鬼商事の5月・オフィス市況(調査対象は基準階面積が100坪以上の主要貸事務所ビル)では、平均空室率(現空床に加え、募集床も対象)は同0.25ポイント増の5.90%。平均賃料(月額・1坪当たり、共益費は原則含まず)は同0.78%低下の2万1249円(グラフ参照)。平均空室率の上昇は15カ月連続、平均賃料の低下は10カ月連続となり、市況悪化のピークアウトは依然見えない状況である。

 区別の平均空室率では都心5区のこの1年の上昇幅は前年同月比4.26ポイント増。5区のうちで最も上昇幅が高いのは港区の同5.67ポイント増で、平均空室率は最も高い7.55%を示す(表参照)。

テナントの解約に変化

 20年度前半、5区の中で最も高い平均空室率を示した渋谷区はリモートワークにたけたIT企業が集積するエリアだ。IT系の中小企業がオフィス解約、館内縮小に関して素早い動きを見せた。20年度後半に入り、大企業のオフィス戦略の見直しが浮かび上がってくる(以下数値は三鬼商事の資料より使用)。

 18~20年の都心5区ではオフィスビルの大量供給が続いた。大量供給が起きると、空室率は上がるものだが、新型コロナウイルス感染拡大以前の平均空室率は1%台で推移し、空前の需給ひっ迫を見せていた。20年の供給物件のリーシングはコロナ禍以前に終了したケースが多い。大企業の本社移転、拠点集約により発生した2次空室はコロナ禍でリーシングが滞り市況の悪化を招いた。

 5区の中で、港、千代田、中央の3区は都心3区と呼ばれ、政府機関、金融機関、大企業の本部・本社が多い。3年間の新規供給量は、千代田区が45万8277坪と最も多く、港区が41万4690坪と続く。ただ、港区の平均空室率には集積する業種の問題がある。港区はIT・情報通信関連の大企業が比較的多く、リモートワークとの親和性、働き方改革やアフターコロナを見据えたオフィスづくりといった大きな流れがある。20年7月、オフィス床面積を3年かけて約50%に最適化する方針を示した富士通の拠点整備も大きなインパクトを与えている。

 都心5区の市況関係で「大手企業の様子見」という表現が使われるが、オフィス戦略自体の見直しを意味するケースがある。一方、21年、22年の新規供給は限定的であり、市場は調整局面に入ると見られているが、ポイントは23年の大量供給だ。その賃料設定が今後の市況を左右する可能性がある。

森ビル 大規模は安定

 森ビルの賃貸オフィスは千代田区を一部含むが、そのほとんどが港区で、大規模ビルが多い。大規模は中・小規模と比べ空室率の水準が低い傾向にあり、高い上昇を示す港区において、同社のオフィス空室率は21年3月末で約2%だ。貸し手と借り手の優位性が入れ替わり、市場の臨界点と言われる5%よりも低い水準を維持する。20年1月に竣工した虎ノ門ヒルズビジネスタワー(オフィスの総貸室面積は約9万6000m2)も満床で稼働した。

 営業本部オフィス事業部営業推進部部長補佐の竹田真二氏は「大企業の多くはこれから新型コロナが本業に与えた影響をしっかりと判断していく。それが今年の大きなテーマになる。業績、定期借家契約の周期を踏まえ、数年にわたって(オフィス戦略を)見直してくるのでは」と推測する。一方、21年、22年は新規供給が例年よりも非常に少なく、調整局面に入るという認識だ。発生した2次空室も時間をかければ埋まっていくという見立てだ。

 リーシングをする際にはテナント側の出社率の問題があり、その設定には各企業の〝キャラクター〟が出るという。IT系だから低く、金融系だから高いというような業種別の違いはなく、大事なのは企業のスタンスと指摘する。竹田氏は「出社率を下げる場合、会社に来る意味、オフィスをつくる意味をお客様に尋ねる。リフレッシュスペースやコミュニケーションの場などを踏まえて、オフィスレイアウトを考えなければいけない」と述べる。

 今後の同社のオフィス物件について、竹田氏は「一時的な解約先行はあるかもしれないが、毎月の結果に一喜一憂はしない。当社が提供している物件は都心の大規模物件が中心であり、中長期的には引き続き2%程度の空室率が維持できるのでは」と展望した。

連載「業界これだけ読めば」の記事一覧

住宅新報ロゴ

同カテゴリーのプレミアム記事

同カテゴリーの速報ニュース

最新の速報ニュース

この記事へのリアクション

情報を整理整頓して業務を効率アップ!気になったニュースはすぐスクラップして、業務に活かせる自分だけのデータベースをつくりましょう。

広告についてのお問い合せ | プレスリリースの送付

住宅新報別冊 不動産テックBIZ
テレワーク応援キャンペーンお申し込み
賃貸不動産経営管理士試験解答・解説2021
不動産日記2022
解答速報号申込2021
好評発売中|最新 わかりやすい不動産法令改正集 2021年度版

注目のキーワード

週刊!みんなの気になるニュース

ピックアップ

オススメ

新着情報

一覧へ ≫
皆様からの情報提供をお待ちしています