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2022年「寅」 投資マネー変調するか (下) 旺盛な資金需要 中間層を置き去り 不動産市場 住宅好調も郊外は振わず 家主・個人投資家向け引き締めか

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投資資金は地域・貸し出し先の選別を強化し始めた。
 昨秋から新規感染者数を低い水準に抑え込んでいた新型コロナへの収束期待が感染第6波で急速にしぼんでいるが、実需向け住宅取引は新築・中古とも底堅く推移している。ただ、つぶさに見ていくと格差が随所で広がりを見せる。賃貸住宅市場でも同様だ。オーナーは賃料と稼働率で頭を悩ます。不動産市場に緩和マネーが流れ込む構図が業界にプラスに働いているものの末端まで波及していない。不動産価格の高騰に個人所得の伸びが追いついてない現状がある。市場のゆがみは富める者に資金を向かわせている。

 企業の休廃業・解散動向を見ると、帝国データバンクの全国速報ベースで21年の廃業件数はコロナ前の19年を6000件下回る5.3万件前後を見込み、55年ぶりの低水準となり2年連続の減少が確実だとした。コロナ禍の各種支援で資金繰りが円滑になっていることが奏功したためだ。ポストコロナを見据える際に政府の資金繰り支援に頼って延命された企業が事業利益で借入金を返済できない破たん予備軍の積み上がりが懸念材料として浮上する。ゾンビ企業の増大が市場のゆがみを物語っている。廃業件数ついては、過去5年で初めて企業倒産の9倍に達するなど高水準で推移している。

実需取引の市況感に格差

 「好調なマンション販売の報道が相次ぐが、私の感覚からは少しギャップがある」

 そうつぶやく大京出身で都内の中堅不動産会社の営業部長は、「新築分譲は都心や東京23区の販売は好調だが、郊外など都市部以外のエリアは販売するのに苦労している。特に郊外の新築物件の受託販売を請け負う販社(受託販売会社)は、業績が振わずに会社を畳むなど数が急減している」と話す。

 こうした販売苦戦の声に加えて、「売れ筋マンションは販社に手数料を払いたくない開発事業者が自ら売り切り、売るのに苦労する立地の物件ばかりを押し付ける」との恨み節も販社から漏れ伝わる。

 前出の営業部長は、「近畿圏は東京に比べて人情味がある。販社に売れ筋物件を回してくれるなど仕事がある」と大阪に単身赴任する大京時代の元部下の声も紹介する。

 一方で大手不動産会社は、オミクロン株の急拡大などの影響で22年の序盤に不透明感が増しそうだが、底堅い住宅需要が続くとの想定が多い。 ウィズコロナの生活が長期化する可能性を見据えた商品企画や環境変化に伴う自然災害の激甚化などが住宅への関心の高まりを後押しするとの見方が市場関係者に少なくない。足元では、大手と中小で市況の肌感覚に歴然とした差が見られるのが特徴だ。

 不動産経済研究所によれば、直近11月の首都圏新築マンションの1戸当たりの平均価格は6839万円と5カ月連続で上昇している。初月契約率もほぼ8割と2カ月連続で好不調の目安である70%を上回った。同研究所は22年の新規供給を3.4万戸とコロナ前19年の水準を上回ると予測している。不動産大手は、高単価の住宅でも購入できる購買力の高い顧客を抱えているほか、原油や木材など原材料価格の値上げを吸収する耐性が中小よりも優れている。

 岸田政権の中間層を厚くするというスローガンを横目に富裕層に照準を当ててコロナ禍でも一定水準以上の高利益率が22年も続きそうだ。

収益計画で振い落とす

 国土交通省が先月発表した住宅着工統計によれば、21年11月の新設着工件数は7万3414戸(前年同月比3.7%増)と9カ月連続で増加した。分譲住宅の堅調な需要と賃貸アパート建設の需要回復が要因だ。アパート市場は、かぼちゃの馬車事件での融資審査書類の改ざんや一部事業者の不良施工問題などの影響から全国的に回復している。

 ただ、人口減少が本格化する中で分譲住宅と賃貸住宅のいずれも緩やかな需要の減少が続き、新設着工件数は緩やかな減少が続きそうだ。新設着工について、SMBC日興証券は年明けの投資家向けレポートの中で21年度は87.1万戸(前年度比7.3%増)を見込むものの、新型コロナ前の19年度の水準に届かず、22年度以降から減少傾向が続く見通しを継続した。24年度には85.7万戸と想定する。

 マーケットの縮小に金融機関も萎縮する。地主が遊休地などの活用でアパートを建てるケースは地方・郊外でも珍しくないが、「貸し渋りはしていない。ただ、将来的な収益計画が見通せない地主への融資は慎重に判断する。建てさせたら後は知らんふりというアパートメーカーの営業姿勢に対して家賃保証会社から不満の声を聞くことは珍しくない」(北関東の信用金庫)。金融機関からの顧客紹介を強みとする注文大手と地主に直談判し受注するアパートメーカーとでは保証会社目線の満足度も異なるという。

 地主にとどまらず個人投資家への融資も厳格化が進む。賃貸住宅などを運用する50代の女性個人投資家は、「メールで銀行や信用金庫などに融資の相談・面談を申し込んだところ、希望に添えないと電話がすぐに掛かってきた。年齢、女性、自営業が断りの理由だった」と振り返る。すでに複数の収益物件を運用して黒字経営にも関わらず、そうした情報を提供する間もなく断るための電話だったとの印象が強かったといい、金融機関の第一関門の扉の重さを実感する。結局、複数打診の中で「城南信用金庫と三井住友トラスト・ローン&ファイナンスは面談に応じてくれて前者から融資してもらった」と話す。緩和マネーが不動産市場に流れ込むが、その行き先の選別が厳しくなっている。

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