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春の繁忙期 首都圏賃貸住宅市場 コロナ転機、コア業務に注力 需要変化と顧客対応

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外装リノベーション後。周辺の競合物件との差別化に成功 リノベーション前。エントランスにゴミの不法投棄が目立っていた
 3度目の緊急事態宣言が出されるなど、新型コロナウイルスの感染拡大が収まらない。こうした中、今年の住宅・不動産市場への影響が改めて注目を集めている。特に首都圏の賃貸住宅市場は、オンライン授業の増加で入居する学生が減少、転勤見合わせによる法人需要の減退などマイナス影響が直撃しやすく、懸念が強まっている。コロナによる波紋、仲介(管理)会社としての対応などを整理しつつ、首都圏賃貸住宅市場の今後の課題を探った。             (井川弘子)

 コロナによる賃貸住宅市場への波紋は大きく2つに分けることができる。1つは借り手側による需要の変化で、もう1つは仲介(管理)会社の顧客対応面での変化だ。

単身向け需要減退

 需要の変化については、更に量の変化と質の変化の2つに分かれる。

 量の変化というのは、特に都心部で見られる学生や転勤者など単身向け需要の減退だ。都内の地域密着の不動産会社からは「学生の動きはほとんどない」(新宿区)、「例年のような地方からの学生や転勤者がいない」(杉並区)といった声が聞かれる。「オンライン授業が増えたので実家に戻るという理由で退去する学生が多かった」(中野区)というのも量的な減退といえる。そのため「このまま単身向け住戸の空きが続くようであれば、賃料相場全体の引き下げにつながる可能性がある」(文京区)との懸念もある。

 質の変化としては、在宅ワークの普及により、ワークスペースの確保や部屋の遮音性などが重要視されるようになった点だ。「単身者でも広めの部屋への要望が増えた」(千葉)ことに加えて、夫婦共に在宅ワークという家庭も増え、部屋数の多さを求めるケースも目立った。また、在宅時間が長くなっているため、従来以上に室内環境や共用スペースの充実など暮らしを楽しめるかどうかにも関心が高まりつつある。

賃料動向、広さで二極化

 アットホームラボの磐前淳子氏(データマーケティング部長)は、「この1年で借り手のニーズの多様化が更に進んだ」と指摘する。アットホームの不動産情報ネットワークに登録・公開された居住用賃貸の募集家賃動向によると、首都圏では昨年の4月以降、単身向けの住戸は下落、ファミリー向けの広めの住戸は上昇基調となっている。「広さによって傾向がくっきりと分かれた」(磐前氏)。特に東京23区のマンションではその傾向が顕著だ。3月の面積別平均家賃では、シングル(30m2以下)が前年同月比3.1%下落しているのに対して、ファミリー(50~70m2)は同0.8%増で15年1月以来の最高値を更新。大型ファミリー(70m2超)は同3.1%増となっている。

入居者の退去防止も強化

 仲介(管理)会社の顧客対応面での変化としてまず挙げられるのは、オンラインでの内見や接客、IT重説などデジタル化の加速だ。「特に遠方の顧客を中心に、この1年でウェブでの内見や重説ニーズはかなり増えた」(港区)とあるように、感染防止のため来店機会や滞在時間を減らしつつ、必要な情報を提供するための工夫として活用が進んだ。アットホームによると、同社が提供する「スマート申込」(賃貸物件の入居申し込みをウェブ上で行うサービス)をはじめとした業務をオンライン化するサービスを利用する不動産会社は、この1年で増加しているという。

 また、顧客対応面の変化としては、既存入居者の退去をなるべく防止することに力を入れる事業者も増えている。対策としては古くなった外壁の塗装、共用部の清掃徹底、住戸内の設備更新などだ。例えば、東京23区の中古ワンルームの管理を手掛ける日本財託では、「いかに今の入居者に長く住んでもらうか」という視点から、外装リノベーションをオーナーに積極提案。「室内のリノベーションに比べてその効果が入居者に伝わりにくく、意思決定が難しいという声があるが、募集時の差別化と入居者の退去防止に意外な効果がある」としている。実際、外装リノベーションで見た目を一新した物件(写真)では、夜間のゴミの不法投棄もなくなり、周辺からもきれいさが際立つ物件となり、案内をする仲介会社からも好評だという。

 更に仲介(管理)会社としては、オーナーを自社の顧客として将来的にもつなぎ留めるための対策としては、新たな投資商品の提案など「オーナーの資産運用面にも踏み込む必要がある」と指摘する中堅管理会社もある。

IT化、一気に進む

 賃貸住宅市場を中・長期的視点で見ると、コロナ後も定着しそうな〝ニューノーマル〟への対応だけでは、仲介(管理)会社は生き残れないだろう。それらはどの会社も、またどのオーナーも考えることであり、差別化にはなりにくいからだ。

 これまで業務効率化を目的としていたIT化が、この1年でコロナ感染防止の観点から一気に進んだ。前出の磐前氏は、「コロナを機にユーザーの家での暮らしに対する見直しが進んだ。仲介会社は、こうしたユーザーの新たなニーズに対応できるサービス提供が求められる。業務効率化で生まれた時間は、接客など仲介会社としてのコア業務に費やせる」と話す。

 賃貸住宅管理業法制定で管理の時代に向かう賃貸住宅市場にとって、コロナは大きな転機をもたらすことになりそうだ。

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