進化する住宅ローン コロナ後の社会変動に対応

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旭化成ホームズと新生銀行が開発した支払額軽減ローンの事例
 新型コロナウイルスは働き方改革を加速し、住まい方の多様化を促す。住宅取得に欠かせない長期住宅ローンの大前提となっているのは年功序列・終身雇用制度だが、働き方改革の流れの中では崩れていくことも想定される。そうなれば、住宅ローンも大きな変革が迫られる。新たな住宅ローン開発の動きを探った。   (井川弘子)

ノンリコース型が99%

 現在の住宅ローンは、従来の従属型雇用形態を前提にしたもので、年齢や勤務先、勤続年数、年収など借りる側の属性で、融資の可否や額などが決定されている。しかし、ジョブ型雇用形態の下では、貸す側はそうした個人の属性よりも、担保物件の将来的な資産価値によらざるを得ない。また、借りる側にとっても、変化の激しいこれからの社会には様々なリスクが想定される。

 長期ローンが持ち家取得に欠かせないとすると、少しでもリスクを減らせる新たなローンを開発することも必要ではないか。例えばローンの返済ができなくなったときには家を売却すれば、仮に売却代金でローンを完済しきれない場合でも残債務が請求されない「ノンリコース型」や、自動車販売でよく使われている「残価設定型」などだ。

 ノンリコース型は既に、住宅金融支援機構の高齢者を対象にしたリバースモーゲージ型住宅ローン「リ・バース60」で大きな実績を上げている。これは死亡時に家を売却して借り入れ元金を返済する仕組みだが、ノンリコースだからローンを借りた親としては子供に負担を掛けてしまうのではという心配をする必要がない。20年度実績では、このノンリコース型の利用が圧倒的に多く、全体の99%にも上る。「リ・バース60」は高齢者が対象となっているため、ノンリコース型の導入が可能になったと言われている。若い人に比べると、借り入れ期間が短いため、地価や建物価格の下落リスクが少ないからだ。

 同機構では、ノンリコース型が一般向けの長期固定金利住宅ローン「フラット35」でも採用される可能性について、「確かに社会情勢の変化を捉え、国民に多様な住宅ローンを提供していくことは重要と考えている。ノンリコース型は返済に困ったお客様が物件売却後に残った債務について請求を受けないというメリットがある一方、機構が被る損害の負担をどうするかという信用リスク上の課題がある。このような観点から、『リ・バース60』は融資限度額に担保評価額の50%または60%といった要件を設けているが、所要資金の大半を借り入れるケースが多い『フラット35』では、このような要件を設定することは困難と考えられるため、ノンリコース型の導入については慎重な検討が必要と考えている。引き続き、ノンリコース型も含め、市場の動向やニーズ等を踏まえた多様な住宅ローンのあり方について検討を続けていく」と述べる。

手元に資金を置きたい

 また、「フラット35」を専門的に扱っているアルヒでは、コロナを背景に高まっている傾向として、「将来の所得に対する不安を抱く人が従来よりも増えたと感じる。手元にある程度の資金を置いておきたいという意識があるのだろう」(大久保弘嗣コーポレートコミュニケーション部長)。将来不安については、同社が昨春にスタートした住宅ローンに付帯できる「全疾病保障」の保険商品が伸びていることでも実感できるという。これは、病気やケガで就業不能となった場合に月々の住宅ローン返済額を保障するものだ。

 同社は、5月に発表した中期経営計画で「住み替えカンパニーへの進化」を打ち出した。スムーズな住み替えのためのつなぎ融資を含めた住宅ローン事業だけでなく、家探しから住み替え相談、引っ越しやエネルギーインフラまで一連をサポートしていく方針だ。

支払額軽減型が登場

 先行きが不安な中、支払額を軽減する新たな住宅ローンも登場している。新生銀行が19年11月に旭化成ホームズと組んで開発した「新生パワーセレクト」だ。これは、借り入れ元本の一部を最終回に一括払いすることで月々の返済額を抑えられるローン商品。例えば、期間35年で6500万円を借り入れた場合、最終回(35年後)に1400万円を一括返済元本とすることで、月々の返済額を一般的なローンよりも約2.6万円低減できる計算だ(図参照)。

 「住宅取得のボリュームゾーンである30代、40代は、子供の教育費の負担も大きい時期。快適な住まいを持ちつつ、返済面での負担を軽減したい」(旭化成ホームズ)。そして最終回一括返済時には、グループ不動産会社の旭化成不動産レジデンスが物件売却を手伝い、仮に買い手がつかない場合は一括返済元本と同額で買い取りを保証するなど、いくつかの選択肢を用意している。最後に安心感があることで、住み替えにもつながる。

 少しずつだが実績も出始めた。今のところ利用者は子育て世代よりもその上の世代が多いという。「子育て世代にもローンの特徴が的確に伝わるように説明を工夫していきたい」(同社)。利用には一定条件をクリアする必要もある。

 新生銀行住宅ローン部の三ツ扇麻子氏は、開発背景について「長寿化で働き方や住まい方の多様化が進んでいるのに、これまで住宅ローンだけが一本槍だった」と話す。更に、「今や長寿化で、一度買った住宅に生涯住み続けるとも限らない。快適な暮らしのためには、家族構成や身体状況の変化に応じた住まいが必要になるからだ。この返済額軽減型ローンは、買い替えるのであれば最後一括返済額が保証されるため、住み替えが選肢択になりやすい」とも述べる。

 こうした新たな住宅ローンの取り組みは国土交通省の補助事業「住宅ストック維持・向上促進事業」にも採択されている。同補助事業は良質な住宅ストック形成を目的に16年から開始しており、この5年間で採択された事業の中には、既存住宅残価設定ローンなど新たなローン開発に関する取り組みも複数採択されている。現時点ではまだ仕組みが完成した段階で、具体的な事例・実行には至っていないようだが、先進事業としての注目度は高い。

カギは将来の資産価値

 ノンリコース型も支払額軽減型もカギを握るのは、物件の将来の資産価値だ。これからの時代はその見極めがローンを貸す側にも、借りる側にも求められることになる。つまり、良質なストック市場の形成が、住宅取得のリスクを減らす大前提となる。

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