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「不動産市場の景色を変えた」 独自成長の仕組み・制度へ 検証・Jリート創設20年を追う 突発的な業界再編に備えよ (下)

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 証券化の発達で不動産業界に市場の規律が強く及ぶようになった。不動産価格が取引目線に合わないのならば買わないし、割安感が出たら買う。経済が悪化しても調整機能がタイムリーに働きやすい。リーマン・ショック級の衝撃がない限り、お金が目詰まりして資産が動かない事態を防ぐ機能を発揮する。

  □   ■  □ 

 Jリートは不動産を保有する会社で、SPCや商業用不動産ローン担保証券(CMBS)のような側面を持つと同時に、外部の運用会社が経営する不動産事業者の側面も持ち合わせている。不動産の収益だけで分配金を出している単純な仕組み。事業が限定的で従業員を抱えないで済むことで一般事業会社よりも安定している。この安定感が投資家に安心感を与えているが、過去には〝想定外〟に公開市場からの退出を余儀なくされたケースがあった。

 リーマン・ショックを受け2008年10月にニューシティ・レジデンス投資法人がJリートで初めて民事再生手続きを申し立てて同年11月10日に上場廃止が決まった。

 これを機にJリートの再編機運が高まり、09年8月にはアドバンス・レジデンスと日本レジデンシャルが合併した。リーマン・ショックで混乱する市場を安定化させようと「不動産市場安定化ファンド」が創設されたのもこの時期だ。これに続き日銀は10年秋にJリートの投資口を資産買い入れの対象とする金融政策を発表した。

●敵対的TOB関心集める

 再編機運は時折、頭をもたげる。最近では昨年8月1日にスターアジア不動産とさくら総合リートが合併した。

 再編に向けてその手法も先鋭化している。今年7月にスターウッド・キャピタルはインベスコ・オフィス・リート(IOJ)に対して非上場化を目的に敵対的なTOBを仕掛けて市場をにぎわせた。IOJのスポンサーグループが運用するファンド2社が公開買い付けする防衛策で不成立となったものの、Jリートでも敵対的TOBの関心を高める結果となった。

 この続編劇は他の銘柄に波及するのか。

 ジョーンズラングラサール(JLL)の大東雄人シニアディレクターは、「現在の市場はNAV(純資産価値)倍率が1倍を下回って放置されている銘柄を散見する。理論上は解散してばら売りした方が、市場価値が高いことを示している。そうした銘柄がいつまでも規制によって守られ、放置されていることは市場にとって健全ではない。運営者自体も市場価値を高めるインセンティブが働かない」と話す。より市場全体の健全性、市場の発展を考えるにはそうした銘柄の再編が混乱なく働くことが重要だとする。

 別の専門家は、「62銘柄がそのまま残る可能性は低い。吸収合併や将来的に上場廃止も出る可能性はある。急ピッチで銘柄数は増えない」と見立てている。

●視野の拡大が成長の鍵

 ただ、投資マネーはオフィスや住宅、商業施設、ホテル、物流施設といった伝統的なアセットにとどまらず、データセンターやシニア住宅、ヘルスケア施設、学生寮などに拡大して資金が流入しており、資産規模の拡大がなお見込まれている。不動産の多くを企業が保有しているが、コロナ禍で業績に影響を受けた企業が保有不動産を手放す動きが顕在化しているように、企業が保有する不動産の流動性が高まることはJリートにとって外部成長の好機だ。

 リートアナリストの山崎成人氏は、「資産規模は30年に30兆円を超えてもおかしくはない」と見る。国や地方自治体が〝持たざる経営〟により庁舎などの資産を流動化すれば不動産市場に新たな風景が広がると期待。要はキャッシュフローを生み出す資産をどれだけ取り込めるかがポイントだ。導管性要件などクリアすべき課題は多いが、空港の場合は、飲食・土産店などの店舗からの収益だけでなく物流施設のような不動産性を持つ貨物機能が備わり滑走路の離着陸料もある。視野を広げれば新規上場の機会も広がる。米国に目を転じれば刑務所までもが運用対象だ。

●銘柄ごった煮に待った 中長期の発展に向けて課題は山積。前述の大東氏は、「スポンサー間との利害関係次第で物件取得能力が大きく左右されるという要素が排除され、独自に成長できる仕組み・制度づくりが必要だ。独自で物件を取得できる環境整備として不動産市場の透明性を高めていくこともプレーヤーの多様性につながる」とアドバイスする。

 東京証券取引所は来年4月に東証1部など現行の5市場からプライム、スタンダード、グロースの3市場に再編するが、Jリートも再編が必要との声が聞かれる。同じ器(市場)に大小様々な資産規模のリートがごった煮で入っている状態だが実力に見合った市場に分けるべきとの指摘もある。まだ20年。新たな成長に向けて模索は続く。

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