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競売物件の急減を演出 ゆがんだ市場、見えない正常化 コロナ返済猶予がもたらす 潜在的な不良債権リスク マンション競落価格が急騰

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全国不動産競売新規申立件数一覧表(単位:件) 競売申立件数と国税・都税の滞納発生件数 落札価格の売却基準価額に対する上乗せ率、期間入札(東京地裁本庁)、1都3県競落物件数(本庁支部の合計数)
 新型コロナウイルスのまん延を受けて不安定な雇用形態に置かれた人を中心に収入が減り、債務を増やした人も多い。業種・業態によっては個々の信用リスクは高まっている。一方で政府は、全国民一律に1人当たり10万円の給付金を配るなどの支援を実施したことで、必要に迫られない人は給付金を貯蓄に充てるなど個人の金融資産が増えた。コロナ支援は企業にも同じような現象を生み出した。コロナでなくても存続が危うい企業まで助けている、という指摘は少なくない。こうした市場のゆがみは不動産競売市場に映し出されている。

 全国ベースの「競売新規申立件数」を見ると、2020年は1万7705件でコロナ前に2万件台で推移していた頃と様相が違う。東京高裁管内の総数もコロナ前には1万件前後あったが7981件まで落ち込んだ。20年は最初の緊急事態宣言のときに裁判所が約4カ月間機能を停止していたことが大きい。

延命策で22年も低水準

 競売市場に詳しいワイズ不動産投資顧問(東京都千代田区)の山田純男代表取締役は、「この停止時期に4000件は競売物件が積み上がっていると考えて積み残し分が21年上旬辺りから差し押さえが件数として表面化すると見ていたが、処理案件は結局存在していなかった」と振り返る。その背景として「倒産、破たんが減少し、差し押さえ件数が少なくなった。おそらくコロナ支援金や無利子融資などのモラトリアムが影響している」といい、失業者を抑える効果により競売案件にまで至らなかったと分析する。

 東京地裁本庁の差し押さえ件数(配当要求終期の公告件数)は、21年に1159件で20年が1120件だった。21年の差し押さえ件数の推移を見ると、2月(72件)が最も低く、その後6月(124件)をピークに下がり続けて9月に100件を切り12月に114件と再び増加に転じた。

 東京商工リサーチによれば、新型コロナ関連の負債1000万円以上の経営破たんは1月14日時点で全国累計2610件となった。昨年12月は過去最多の174件を記録。21年2月から100件超が続き9月からは4カ月連続で最多を更新した。ただ新型コロナ変異株のオミクロンが急拡大している。公的支援による延命策が続き当面競売件数の増大が抑えられそうだ。

23年に差し押さえ増へ

 税金の滞納も減少傾向だ。都税はコロナ前の18年との比較で20年に1割以上も件数が減ったが、「銀行の話によれば納税猶予がかなりの数にのぼる。コロナ禍で差し押さえを控えた結果、不動産の滞納処分件数がぐっと減った」(山田代表取締役)という。

 無利子融資と納税猶予のダブルで助け舟を出す。コロナ直撃を受けていない業績不振企業もコロナ理由とするモラルハザードに警戒する声も上がる。「売り上げ減少がそれほどないのに付き合いのある銀行が3年間無利子ですよ、と話を持ってきたりした」(零細事業者)とゼロゼロ融資(実質無担保・無利子融資)は政府系金融機関と民間銀行で事実上のモラルハザードをもたらしたとの指摘もある。

 オミクロン感染の状況を踏まえれば、22年も資金面での支援が続き、競売市場は過去2年間と同じように推移しそうだが、コロナ支援で受けた融資の返済が始まれば倒産が急増する。「倒産に加えて足元の競売物件の価格高騰が競売件数を押し上げる。競売が増加に転じるのは23年になりそうだ」(山田代表取締役)。

裁判所の修正価格上回る

 東京地裁本庁の21年の売却率は98.91%だった。入札10本以上の人気物件は395件とコロナ前より多い。落札1物件当たりの入札本数は20年上期の9.34本から一気に上昇し、20年下期に13.58本、21年下期には14.65本と過熱感はピークに達している。

 特にマンション価格は高騰しており、それは競売物件でも同じだ。裁判所が市場修正として売却基準にゲタを履かせて引き上げてもそれを上回り、競落価格はかつてない高水準で市場流通の平均価格を上回る。競売物件を再販しても需要が付いてこられない。高値購入した不動産事業者が破たんに追い込まれ、再販できない物件が再び競売に登場するシナリオもくすぶる。

 収益物件が売れなくなる可能性もある。足元の入居者誘致に苦労するワンルームマンションの現状からは、在庫がはけずに買取再販事業者の経営を圧迫することも予想される。競売市場はコロナバブルと化し、事業者にとっても高嶺の花となっている。

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