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彼方の空 住宅評論家 本多信博 ◇46 創刊75年・読者の声 (下) 「Web版に新たな使命を」 業界の枠を超える〝専門紙〟

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科学技術の発達で社会が変化するスピードがどんどん速くなっていく。そういう時代だからこそ、人間にとって永遠に変わらないものとは何かを考えるのもジャーナリズムの使命である

 業界紙記者は業界の取材をするのが仕事だが、それだけで業界のことが本当に分かっていると言えるのだろうか。同じことは業界人にも言える。不動産業歴が長いほど、業界独特の思考から脱却するのが難しくなる。

半世紀前に出版

 1950(昭和25)年に住宅新報社の社長に就任した故中野周治氏が1971(昭和46)年に著した『不動産業と倫理』(住宅新報社刊)にはこうある。

 「われわれは、不動産業界という特定業界から広く眼を社会全体に転じ、大所高所から業界を再認識することにより、はじめて不動産業者の社会的存在意義と責務を見極めることができる。また、そのような自覚の上に立っての意思決定であってはじめて、企業活動を正しい方向に発展せしめることができるであろう」

 同書は著者が1962(昭和37)年から加わっていた世界不動産連盟の国際業務規約委員会での討議と、それに対する私見をまとめたものだが、その主張はSDGsが叫ばれる今日のことかとさえ思うほど新しい。

 住宅新報を愛読する不動産流通推進センター常任参与・教育事業部長の真鍋茂彦氏が創刊75年を祝して寄せてくれたコメントにはこうある。

 「半世紀前に出版された『不動産業と倫理』に私は大いに啓発されました。同書のようにリサーチという形をとり、かつ知見に富んだ不動産に関するヒント、気づきを多く含んだ書物はほかにないと思われます」

 「多分、当時の業界人の多くがこの本に触発されて不動産業の改革に取り組まれたのではないでしょうか。住宅新報社はこうした業界に対する啓蒙事業を今後もさらに推し進めていただきたいと思います」

 社会が混迷の度を深めつつある今こそ、住宅新報は業界人が「広く眼を社会全体に転じ、大所高所から業界を再認識する」ことに役立つ存在にならなければならない。そのためには、業界を取材しつつも常に一歩引いた視点を持ち、社会の要求に照らした報道を心掛けなければならないだろう。

潜在する読者層

 真鍋氏はこうも語る。

 「私は45年前の学生時代に、住宅新報社の『宅地建物取引の知識』で勉強して宅建試験に合格しました。当時から受験生必須アイテムであったと思いますが、その時すでに30年の実績と信頼があったわけですね。貴社にはそうした歴史に裏打ちされた潜在的な知名度、信頼という財産があります。それを活かして、業界の外の人向けに発信する事業はいかがでしょうか?」

 「例えば、住宅新報のWeb版を本紙の情報を補完するためではなく、不動産に関するもっと幅広い情報を、業界外の多くの潜在的な読者層や貴社のファン向けに発信するというスキームはどうでしょうか。中期的には本紙の読者増や、記者の方々が書く記事の間口を広げる効果もあるのではと思います」

 ちなみに、真鍋氏は旧藤和不動産でのマンション事業や仲介部門である藤和不動産流通サービス(現在の三菱地所ハウスネット)でのリテール部門でブロック長などを歴任。その誠実な人柄が好まれ当時から続く人脈も多い。

   ◇     ◇

 不動産は住宅がその象徴だが、国民生活のインフラをなすものである。不動産業はその開発・流通・管理・投資・運用を担っているに過ぎない。しかし、不動産の本質はもっと幅広く奥深い。

 所有者不明土地問題で明らかになったように、そもそも不動産を所有する権利とは何か、なぜ相続は許されるのか、最終的帰属先はどこか。空き家問題が象徴するように、住まいとは何か、家族よりも強い絆が人間社会に登場したとき、住まいの役割はどう変容するのか。AI(人工知能)は都市と人間との関係をどう変えるのか――。

 不動産業界紙が業界の枠を超え、大所高所から人間社会の未来に眼を向けたとき、〝専門紙〟としての新たな道が見えてくる。

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