同素案は、2050年カーボンニュートラルの実現および、これと整合する30年カーボンハーフ目標の達成に向けた今後の省エネ対策や再エネ導入拡大に関する実効性ある制度のあり方を示したもの。今回の環境確保条例改正に関する審議の経緯をはじめ、「直面するエネルギー危機と深刻化する気候変動の危機」「都の気候変動対策とゼロエミッション東京を実現する意義」など5つの柱で構成される。
「30年カーボンハーフに向けた制度強化の基本的考え方」では、(1)建物のゼロエミッション化に向けた取り組み強化、(2)都内での再エネの基幹エネルギー化、(3)脱炭素経営と情報開示に取り組む事業者の後押し――を明示。脱炭素社会において世界都市の共通目標である建物のゼロエミ化は必須とした上で、建物の断熱・省エネ性能の向上、災害時の停電へのレジリエンス向上を掲げる。
特に新築建物は今後の東京という都市の姿を規定していく点を重要視し、ビルおよび住宅においてゼロエミッション仕様の標準化を目指すと共に、既存建物においてもゼロエミへの移行を開始していく。都外も含めた再エネ利用設備の設置や調達など、エネルギーマネジメントの範囲を拡大・広域化した取り組みを視野に、30年に向けてはDX等を活用した高度なエネルギーマネジメントの社会実装を推進していくべきとした。
中小建築物に新制度
「強化・拡充する事項の内容」では、制度強化の考え方や具体的な対策を記した。新築建物では、大規模建物に対し、太陽光発電設備等の設置義務、ZEV(ゼロエミッション車)充電設備最低基準の新設、断熱・省エネ性能の最低基準を国基準以上に設定することなど制度の強化・拡充を図る。また、住宅等の一定の中小新築建物に対しても新制度を創設し、同様の整備を推進することを盛り込んだ。
今後の施策展開に向けた留意点として、都は多様な主体との連携・協力をはじめ、都庁の率先行動と国・区市町村および世界の都市等との連携強化を提示。更に、継続的な制度検証や今回の制度強化対象以外の取り組み強化も進める方針とした。
委員からは、脱炭素対策を加速させる都の取り組み姿勢についておおむね評価する意見が出された。結びに田辺新一座長も「都はエネルギー面を見ても地方、世界に支えられており、大消費地東京の努力は日本国にとっても重要」と評価した上で、「太陽光発電設備の義務化には不安を感じる人もおり、これらを払しょくする案も引き続き検討してほしい」と都のリーダーシップに期待を込めた。